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現在価値と将来価値? 治療方針に迷ったときの考え方

現在価値と将来価値? 治療方針に迷ったときの考え方

 副作用の辛い治療法が多い乳がんの標準治療ですが、それぞれの乳がんのタイプによって治療法も違い、治療効果もはっきりと予測できるものではありません。辛い治療に耐えれば耐えるほど予後がよくなるというわけでもありませんから、女性であれば乳腺摘出の手術や脱毛の副作用がある抗がん剤の使用をできることなら避けたいと考えたとしても無理もありません。抗がん剤治療を受けることを決断した後も、辛い副作用に苦しめられている内に「これは本当に自分にとって必要な治療だったのだろうか」とモヤモヤした気持ちを燻らせる人も少なくはないかもしれません。
 今回は、投資などファイナンスの意志決定の場面で広く用いられている評価方法をひとつの考え方として、乳がん治療中のファイナンシャルプランナーの目線からご紹介します。

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治療方針の決定が悩ましい理由

 「抗がん剤の辛い副作用」のデメリットと「それによって将来受ける恩恵」のメリットを天秤にかけたときに、メリットの方が大きく上回っているのであれば迷うことなく受けようと思う人は多いことでしょう。しかし、例えば「100人中30人が手術後になにも行わなければ再発する可能性がありますが、抗がん剤治療を補助療法として追加すれば再発するのは15人になります」といった数字を抗がん剤治療はできれば避けたいと考えている人が提示されたとしたら、おそらく自分は抗がん剤治療を受けなくても再発することのない70人に含まれるだろうと思いたいものなのではないでしょうか。

 お金やものの価値は時間と共に変化して一定ではないように、治療法や薬の価値も時間の経過と共に変動するものです。もしかしたら、自分の乳がんのサブタイプの根治が期待できるようなよく効く薬が近い将来に開発されることだってあるかもしれないからです。

 では、抗がん剤治療を現在の時点では受けずに、もしも再発してしまったらその時に受ければよいのではないかと考える人もいるかもしれません。しかし、乳がんという病気は再発してしまってからでは遅いのです。それに、再発したときには治療に耐えうる体力がなくて抗がん剤治療を受けることができない場合だってあります。見方によっては、再発していない現在に抗がん剤治療を行うことは「将来再発したときに必要な治療を前借りして現在に受けること」という考えかたもできるのです。

現在価値とその計算方法

 ファイナンスの考え方に「 現在価値 (Present Value : PV)」というものがあります。この考え方は投資やファイナンシャルプラニングに限らず、会計やビジネス全般における意志決定の場面で広く用いられています。
例えば、投資をする場合、株・債権や不動産などの投資対象の価値が将来どうなるのかという予測をもとに現在における価値はどのくらいなのかを算出して、投資する価値があるものなかどうかを吟味します。企業が他社を M&A (Mergers and Acquisitions)で合併・買収してビジネスを拡大しようと企てる場合もこの考え方が広く用いられています。

 具体的な計算方法として、n年先の価値を現在の価値に換算した 現在価値 (PV)を求めるときに基本となるのは以下の式になります。

n年先の価値を現在の価値に換算した現在価値(PV)の式
(12-1) 現在価値 (PV)の計算式

この式を変形させた以下のような式で、現在の価値をn年後の価値に換算した「 将来価値 (Future Value : FV)」を求めることもできます。

現在の価値をn年後の価値に換算した「将来価値(Future Value : FV)」を求める式
(12-2) 将来価値 (FV)の計算式

現在価値とDCF法

 企業が他社を買収するときによく用いられる方法のひとつに DCF 法 (Discounted Cash Flow Method)があります。これは会社が将来生み出すであろう フリーキャッシュフロー (Free Cash Flow : FCF)の 現在価値 を推計して対象の企業の価値を評価する方法で、上記の計算式が基本になります。 DCF法 は「割引キャッシュフロー法」「割引現金収支法」と呼ばれることもあります。買収対象候補の企業の将来の価値を現在に“お得に”購入するための数値化のひとつの手法であるといえます。

  DCF法 では資本コストなど将来までの期間の間のリスクを勘案した割引率によって 現在価値 に割り引いて対象企業の評価額を算出します。算出された 現在価値 から投資額を差し引いた「正味現在価値(Net Present Value : NPV)」が大きいほど、将来その企業が獲得するキャッシュが多いという判断のもとに投資をするかどうかを決定します。

 企業価値を計算する手法はDCF法以外にもありますが、それらはコストアプローチ、インカムアプローチ、マーケットアプローチの3種類に分類されます。

企業価値の評価方法
(12-3)企業価値の評価方法

精度はどれだけ将来のリスクを織り込めるかによる

 さまざまな場面で用いられるのに共通するのは、時間の経過と共に価値が変動するものに対して現在における価値を求めて計画を立てるということです。将来に価値が下がると明確に分かっているものに対して投資をしても意味がありませんから、将来どれだけ価値を生むのかの数値化ということになります。

 そもそも、将来の意志決定が難しい理由には、リスクを読むことの難しさが挙げられます。長い人生の間には、そうそう自分に都合のよいことばかりが現実に起きるわけではありません。むしろ困難なことだってたくさん起きます。それはビジネスにおいても一緒で、ずっと先の未来であればあるほど先行きを読むのは難しくなります。算出する 将来価値 や 現在価値 の精度を考えたときに、将来までの期間で受けるリスクをどれだけ正確に予測して織り込むことができるかが肝になってきます。

 企業価値の評価というと少し難しい話で自分には無縁だと感じる人もいるかもしれませんが、この 現在価値 と 将来価値 の概念を分かっているかどうかによってあなた自身が生きることになる未来が大きく変わる可能性だって十分にあるのです。

 例えば、現在までに支払った年金料の総額から将来に受け取れる年金の現在における試算額を知ることができますが、現在の1万円とあなたが将来に年金を受け取れる年齢になったときの1万円の価値が同じとは限りません。また、現在就いている職業における個人のキャリアやスキルの市場価値も、時代の流れとともに将来は違ったものになっていたとしても不思議ではありません。現在やっていることの 将来価値 と将来になりたい自分の 現在価値 を比べたときにギャップがあるのであれば、自分のこれまでの生き方を見直して現在の自分のなにかを自分の力で変える必要があると知ることができます。

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抗がん剤治療の将来価値を決めるものとは

 では、治療方針の意志決定を 将来価値 の式にあてはめて考えた場合に、現在受けることができる治療の 将来価値 を決めるものはなんでしょうか? 現在使用することができる薬の奏効率と伸びる寿命の年数というメリットだけではなく、できるだけ正確なリスクを織り込んだ割引率をはじきださなければいけません。自分の乳がんの進行速度や患者の年齢や治療に耐えうる体力の有無のほかにも、新薬の開発スピードと厚生労働省によって日本国内での使用が承認されるまでのドラッグ・ラグという要素もあります。副作用によって将来の生活の質がどれだけ損なわれるのかという点も重要ですから正確に把握する必要があります。

 治療の選択においても DCF法 以外のコストアプローチや、インカムアプローチ、マーケットアプローチをしようと思えば可能かもしれません。しかし、人間の人生の満足度は収入や保有資産の額、他人との比較では解決できないものだと私は考えています。

 それでも、 現在価値 と 将来価値 の概念を用いて将来の不確実な要素を分解してみることには価値があると私は思います。そうすることで自分の価値観も明確になるからです。人生の満足度は、どれだけ正確なリスクを把握してそれに備えられるかと、どのような将来を自分は望むのかを知ることにかかっているのではないでしょうか。

 今回は、投資やビジネスなどの意志決定のために広く用いられている 現在価値 と 将来価値 の考え方をひとつの考え方としてご紹介しました。治療法の選択に直面している人たちに限らず、自分らしく満足度の高い人生を送りたいすべての人たちを応援します。

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