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乳がん治療費はどのくらいかかるの?無駄な出費を抑えるために知っておきたいこと

乳がん治療費はどのくらいかかる?無駄な出費を抑えるために知っておきたいこと

手術や抗がん剤治療などの乳がん治療費についてさまざまな書籍やウェブサイトなどによる情報がありますが、「結局のところ、全部でどのくらいかかるの?」という疑問を解決できるものはなかなかないというのが実際に治療を受けた後で私が受けた印象でした。それらには現在は(もしくは過去にも)行われていない治療法の費用などが掲載されている場合もあるのですが、本質的に「がん治療というのはそうそう計画通りにはゆかないものだ」という観点が欠けているものが多いからなのだと思います。
実際の治療では治療費というものは予想以上にかかってしまうものです。今回は、想定外の費用が膨らんでしまう理由を、乳がん治療中のファイナンシャルプランナーの目線からご紹介します。

ソフィア | ファイナンシャルプランナー
自身の乳がん治療の経験とお金の専門家としての視点から、乳がん治療で役立つお金の情報のコンテンツの発信や、乳がん経験者のコミュニティーの運営を行っています。

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治療費の正確な試算が難しい理由

患者として実際に治療を受けてみると、治療開始前に医師から提案された治療計画は副作用がきつくてすべて計画通りにとはゆかないことに気づきます。乳がんの標準治療では、手術以外にも放射線治療、抗がん剤治療、ホルモン療法などを再発予防目的の補助療法として受けることが多く、副作用の多い治療を長期に渡って行います。通常、副作用は別の薬による対症療法をしながら続行しますが、継続が難しい場合は他の薬に変更したり休止や中止したりもします。副作用の出方には個人差があって事前に予測することは困難ですから、それにかかる費用を事前に予測することも難しいのです。

再発予防目的の治療や補助療法にも副作用や後遺症などの身体的負担や金銭的負担といった「治療の代償」がもれなく付いてくることも忘れてはいけません。人生の価値観は千差万別です。生活の質を落としてまで副作用の辛い治療を望まない人もいれば、再発の不安をただ抱えて日々暮らすよりも補助療法の辛い副作用に耐えているほうがよいと考える人もいます。そのあたりの選択をどうするかによってもかかる費用は変わってくるのです。

ホルモン療法とその副作用

現代日本人女性の乳がんの約70%を占める女性ホルモンに感受性のあるタイプの乳がんは、手術後の補助療法としてホルモン療法を行うのが現在の標準治療となっています。抗がん剤の副作用は投与した直後から出るのに対して、ホルモン剤は飲み始めにはそれほど目立った副作用を感じなかったとしても続けてゆくにつれて苦しめられるようになるというのが両方の治療を経験した私の感想です。乳がんのホルモン療法は5~10年という長期にも渡りますから抗がん剤治療以上に辛い治療と言っても過言ではないかもしれません。

ホルモン療法では副作用として更年期障害のような症状が出ます。ホットフラッシュや関節痛などはよく知られている副作用ではないでしょうか。大量の汗がとめどなく噴き出てきたと思ったら、その揺り戻しで5~10分後には夏でもガタガタと震えるほどに寒さを感じるというのを毎日昼夜問わず交互に繰り返すといった感じです。ホットフラッシュがひどく出る人は、夜の睡眠が妨げられて不眠症にもなるようです。

ホットフラッシュよりも私がもっと辛く感じた副作用はうつ症状でした。まるで底の見えない冷たい谷底にひとり落とされてゆくような絶望感と無気力感。ホルモン療法を受ける5~10年もの長期間、果たしてこの症状に耐え続けられるものなのかと絶望的な気分になりました。

精神神経系:(0.1〜5%未満)頭痛、眩暈、(0.1%未満)不眠、抑うつ状態、感覚異常(錯感覚、味覚異常を含む)。

『日経メディカル処方薬辞典』ノルバデックス錠*20mgの添付文書「2.その他の副作用」箇所より引用

厚生労働省『自殺・うつ病等対策プロジェクトチームとりまとめについて』や警視庁の「自殺の状況にまつわる統計」にもみてとれるように、うつ病は自殺の原因のひとつです。

哲学者キルケゴールは「死に至る病とは絶望のことである」と記したといいます。乳がんの再発予防目的で補助療法を受けている人がその副作用のうつ症状が原因で自殺に追い込まれてしまったとしたら本末転倒ではないでしょうか。この副作用に対して抗うつ薬などの投薬で対症療法を行うのであれば、当然その費用もかかることになります。

「原因が分からない」はずなのに処方される薬がある

医学的に原因が分からないとされている乳がんの治療後の後遺症のひとつに乳房切除後疼痛症候群(PMPS : postmastectomy pain syndrome)があります。

乳房切除後疼痛症候群(postmastectomy pain syndrome;PMPS)とは,前胸部から腋窩,上腕にかけてのヒリヒリ,チクチクとした痛みが特徴の慢性疼痛である。その原因は明らかではないが,手術,放射線療法,化学療法による肋間上腕神経障害が関与するといわれ¹),術後10年を経過しても約20%に症状を認める報告がある²)。

(中略)

PMPSは肋間上腕神経障害が関与する慢性疼痛として,神経障害痛(neuropathic pain)の一つとして位置付けられている。

(中略)

抗うつ薬(三環系抗うつ薬,SNRI,SSRI),抗痙攣薬〔ガバペンチン(保険適用外),プレガバリン〕,局所麻酔薬,オピオイドがその第一選択薬として挙げられる。しかし,神経障害性疼痛の発生機序と臨床症状は多様で,診断や治療効果の客観的評価を統一することが難しい。

日本乳癌学会『乳癌診療ガイドライン』より引用

経験者として断言します。この場合、原因が分からない原因は似たような副作用のあるきつい治療を同時期に立て続けにいくつも行うからです。医療に限らず、なにか問題が起きたときに原因が分からなければ解決できる確率が低いのは当前です。無駄な投薬から自分の身体と懐を守るためにも、まずは自分自身で原因を見極めましょう。最も頼りになるのは自分自身の身体から発せられるサインです。毎日の症状の変化や服薬の記録、診察時の記録を整理してしっかりとつけておくと役立ちます。複数の治療を同時期に受ける場合は少しずつでも時期をずらすなど工夫して重ならない期間を作ってみると、副作用が始まった時期を糸口にして分かりづらかった原因が見えやすくなることもあります。それから身体の中で起きている本当のことをきちんと説明してくれる信用できる医師の診察を受けましょう。

一通りの治療が終わったその後もかかる費用がある

参考まで私の体験談をご紹介しようと思います。痛みを抱えながら日常生活を送るというのは本当に辛いものです。痛みの原因も対処法も分からない内は私も「この先ずっと生きている限りこの苦痛に耐え続けなければいけないのか」という気分になりました。その原因不明とされる痛みを和らげようとして余計にかかってしまう費用だってあるのです。乳がん治療を受けていて原因が分からないとされる痛みに苦しんでいる方々のひとつの手がかりとなれば幸いです。

既に引用した日本乳癌学会のガイドラインでは、 乳房切除後疼痛症候群 (PMPS)の痛みは「前胸部から腋窩,上腕にかけてのヒリヒリ,チクチクとした痛みが特徴の慢性疼痛」と定義されています。その一方でそこでは「肋間上腕神経障害が関与する慢性疼痛」とも定義されているのです。

前胸部から腋窩、上腕にかけての部分は手術のときに無数の小さな神経が切断されたことで手術直後からずっと感覚が麻痺したようになっていた箇所ですが、この部分のヒリヒリチクチクとした痛みはそれほど苦痛な痛みでもありませんでしたし、私の場合、この痛みにはカロナール(アセトアミノフェン)という解熱鎮痛剤が効果ありました。それよりも辛かったのは、術後7~8ヶ月目に術側の上腕外側に出た痛みでした。この痛みはヒリヒリチクチクなんていうものではなく、腕を動かすとズキンという激痛が腕を走ります。この痛みにはカロナールは効きません。実はこの激痛、乳房全摘出の手術と同時にレベル2までのリンパ節郭清を行って肋間上腕神経を切断された私がその直後からしばらくの間、寝ても覚めてものたうち回って苦しんだ痛みによく似ていました。手術の傷も1~2ヶ月で癒えてこの激痛から解放された生活を送れていたのに、術後7~8ヶ月目にそれによく似た痛みに苦しむようになったのです。手術でほとんど上がらなくなった術側の腕はリハビリテーションを続けることで術後5か月の時点では大分上がるようになってきていましたが、その数ヶ月後にこの激痛とともに手術直後のように再び上がらなくなったのを不思議に思っていました。

整形外科を受診した私に医師から最初に投げかけられた質問は
「放射線治療を受けましたか?」
でした。
確かに私は手術を受けた後に放射線治療を受けました。私が頷くとその医師は、
「放射線は血管とか破壊するから……」
と語尾を濁して眉を顰めると、手に取った肩関節の模型の腕を上げたり下げたりしてみせました。そして、肩の上で身体の前後方向へと橋のように跨がる靱帯の部分を指さして言いました。
「いいですか、これがこの下をくぐっているんです」
模型の肩先から首の方へと身体の横方向へ向かって伸びた筋肉は、腕の上げ下げの動きに合わせてスライドするようにその橋のような靱帯の下をくぐって伸びたり縮んだりしています。
「ここが傷つけられて癒着してしまっていて……」
腕を動かそうとすると癒着箇所を剥がす方向に力はかかるけれど癒着で離れず、肩関節周囲炎を起こしていて激痛が走るのだそうです。術側の腕が再び上がらなくなったわけです。

ちなみに、後日に放射線治療を担当した医師はこの説明を受けると「そんなことがあるのか」と言い、よく知らなかったようです。……。

腕の激痛の原因が明確になりまずは一安心したところで私は治療を受けることになりました。

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肩関節周囲炎の治療費

私が受けた肩関節周囲炎の治療は、

  1. ヒアルロン酸にステロイドもしくは痛み止めの薬を混ぜて肩に注射する(1週間に1回)
  2. 痛み止めの内服薬(1日2回)
  3. 肩に湿布薬を貼る

というものでした。1.の注射は保険適用で5回まで受けることができます。5回受けた時点で完治はしていませんでした。5回目の注射が終了しても治療を継続したい場合は、2週間以上経過後からであれば保険適用の維持療法として2週間に1回の間隔で注射を受けることができます。

肩関節周囲炎の治療費
肩関節周囲炎の治療費

リンパ浮腫の治療にかかる費用

乳腺摘出の手術だけでなくリンパ節郭清も行った場合には、術側の腕が浮腫んでしまうリンパ浮腫になるリスクがあります。もしこのリンパ浮腫になってしまったら、弾性スリーブを購入し装着して着圧をかけるのが対症療法となるようです。

弾性スリーブの価格

街のドラッグストアなどでも着圧タイツのような商品は販売されていますが、病院でリンパ浮腫を改善する目的で薦められる弾性スリーブは医療機器として売られているものです。1枚あたり1万円前後の価格帯で販売されています。

弾性スリーブなどの弾性着衣は医師が使用を指示した場合は健康保険適用となります。健康保険の自己負担額が3割の人の場合は、適用されれば自己負担は3割で済みます。しかし、一旦全額自己負担で購入してから自身が加入する健康保険の保険者に療養費の申請をして審査を受ける必要があり、審査に通らなければ給付はなく全額自己負担になります。審査に通っても、申請してから自身の銀行口座に療養費が振り込まれるまでに数ヶ月程度はかかります。弾性スリーブの場合は給付の上限額は1回の申請で16,000円までで、一部位2枚までが支給対象になります。2回目以降の申請は前回の購入日から6ヶ月以上経過していることが条件です。購入日の翌日から2年以内に申請しなければ給付を受ける権利は消滅します。

療養費の給付申請のステップ

  1. 「弾性着衣等装着指示書」を担当医師が作成する
  2. 医師の指示内容に沿った弾性スリーブを購入して領収書を発行してもらう
  3. 「療養費支給申請書」を自身の加入する健康保険の窓口やウェブサイトから入手して記入し、上記の1.と2.を添付して提出する
    ***詳しくは自身の加入する健康保険へお問い合わせください。***

審査する団体によるところもあるのかもしれませんが、2.の領収書は商品名・型番・着圧・枚数が明記されたものを提出した方が無難だと思います。また、弾性スリーブは医療機器ですから信用のあるルートで購入した方がよいでしょう。

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