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初心者にもやさしい!株式投資の銘柄の探し方

株式投資の銘柄の探し方に関する疑問は、初心者のだれもが最初にぶつかる大きな壁ではないでしょうか。
「株の銘柄選びで重要な株価指標や財務指標はどれ?」
「儲かる株はどのような銘柄?」
「どの銘柄をどれだけ買ったらいいの?」
これらの疑問が障壁となって、なかなか投資の世界に足を踏み入れられないという人も少なくはないでしょう。

この記事では、株式投資の銘柄の探し方の基本と初心者にもおすすめする方法を、ファイナンシャルプランナーがやさしく解説します。

株式投資の銘柄の探し方の基本と手法

銘柄の探し方の基本

株式投資の銘柄を探す方法には、大きく分けるとテクニカル分析とファンダメンタル分析の2種類のアプローチ方法があります。

テクニカル分析は、株価の値動きやチャートの形状、移動平均線やボリンジャーバンドなどのテクニカル指標を用いて銘柄を分析します。

ファンダメンタル分析は、企業の業績や財務状況などのデータを基に、企業の成長性や安定性、収益性、割安性など評価を行います。業界や市場全体の動向、経済指標なども、株価に影響を与える可能性があるため、ニュースや市況情報にも常にアンテナを張って銘柄分析に役立てます。

テクニカル分析とファンダメンタル分析のどちらも、数学的な分析がその根底にあると言えますが、ファンダメンタル分析における財務分析は基本的に四則計算なのに対して、テクニカル分析ではより高度な数学的分析をした結果を指標として視覚化しているものも多いです。テクニカル分析では、分析のベースになるのは過去の値動きのチャートです。ファンダメンタル分析では、市場動向や経済状況などの背景の理解と予測も必要で、テクニカル分析よりも文系寄りの数値分析と言えるかもしれません。

このように、テクニカル分析とファンダメンタル分析では、それぞれに複数の指標がありますが、分析の切り口が根本的に違う手法なのです。企業も人間と同様に、見る角度によって魅力的に見えることもそうでもないこともあるため、複数の手法を組み合わせて多角的に評価することが大切です。

初心者にもおすすめする手法

そこで、おすすめするのが、テクノファンダメンタル分析です。テクノファンダメンタル分析は、テクニカル分析とファンダメンタル分析を組み合わせた手法です。人によって組み合わせ方などそれぞれやり方が違うのでしょうが、私が初心者にもおすすめするのは、ファンダメンタル分析によるスクリーニングで業績や財務面から買い付け候補銘柄群、それらが買い時かどうかをテクニカル分析で判断する方法です。

手順は、以下のとおりです。

1. 企業の業績の分析

  • 売上高や営業利益、純利益などの財務諸表から、企業の業績を評価する。
  • 過去(5~10年間)の業績を比較して、成長率や収益性などを評価する。
  • 業界平均や競合他社との比較して、企業の競争力を判断する。

2. 財務状況の分析

  • 資産や負債、自己資本などの財務諸表から、企業の財務状況を評価する。
  • 財務指標から収益性や資本効率を評価する。

3. 成長性や収益性に影響を与える要因の分析

  • 新製品や新規事業、M&Aなど、企業の成長戦略を評価する。
  • 消費者動向や業界全体の動向を分析する。

4. 株価との比較

  • 企業の業績や財務状況の分析から得た評価額と現在の株価との差を比較し、株価が適正かどうかを判断する。

5. テクニカル分析

  • チャートの形状やテクニカル指標を用いて、買いの銘柄かどうかの最終確認と買いのタイミングをはかる。

儲かる株とはどんな株?

買った株が買値よりも高い値段で売れれば儲けが出る初心者におすすめの現物株の取引を前提にいうと、儲かる株とは、“基本的には”収益が伸びてきていて将来も伸びると予想できる、いわゆる「業績が右肩上がり」の会社の株です。私が初心者にもおすすめするテクノファンダメンタル分析のやり方では、テクニカル分析からではなく、ファンダメンタル分析によるスクリーニングの工程から開始して買い付け候補銘柄群を絞る理由はここにあります。ただし、“基本的には”というところはとても重要です。

その主な理由のひとつには、実際の株価と理論株価のずれがあげられます。理想と現実のギャップです。

理論株価の出し方にもいろいろありますが、例えば、企業の業績や財務状況、業界の市場規模や競合状況などを分析して、株価の適正価格を評価しても、適正価格と実際の株価が常に一致しているわけではありません。ましてや、将来の価値という不確かな要素を含めると、どの手法を用いたとしても完璧な予測をすることはほとんど不可能です。

それから、必ずしも市場が自分と同じ評価をするとは限りません。例えば、異性などの人物を評価するときは、ある人は外見の端正な美しさが評価され、ある人は真面目で誠実なところが評価され、ある人は笑いのセンスがあるところが評価され、……などなど、評価する面や評価基準が個人によって違うはずです。自分にとっては超絶魅力的な人を推したとしても、市場が同じ基準で評価するとは限らないのです。また、とても悲しい話、家族や恋人などの人間関係において、理想と現実のギャップに失望して別れを告げたり告げられたりすることがありますが、株式市場においても同様のことがあります。企業が発表した最新の決算内容が予想(コンセンサス)を下回ったときなどに、理想と現実のギャップに失望した投資家が大量に株を売った結果、株価が下がることがあり、この売りは「失望売り」と呼ばれます。人間関係においては「情」というものがあるわけですが、お互いの人柄をあらかじめ正確に理解できていれば、失望したりされたりといった機会は減らせるのではないでしょうか。「恋は盲目」と言いますが、株の銘柄選びにおいても、盲目的にならずにできる限り正確な理解をしたいものです。

業績が右肩上がりでも、株価は一本調子の右肩上がりとはなりません。人間にも毎日の気分にムラがあるように、株価も常に動いていて一定ではないからです。人間の生活でも、根も葉もない噂話に惑わされたり、不安を煽られたりして、本来の適正な価値よりも過少、もしくは、過大に見積もったりといったことは日常茶飯事でしょう。株価も、不測の事態や業界の動向に足を引っ張られて売られすぎたり、時には、過剰な期待のもとに買われすぎたりといった動きがみられ、常にそれらを修正しつつ揺れ動いています。中長期の投資では、日々のゆらぎの中でも上昇傾向なのか、下降傾向なのか、それとも横ばいなのか、株価の動きの方向性を「トレンド」という形で捉えながら取引を行います。短期・中期・長期のどのスパンで投資をするのか、どの戦略のどの局面で儲けるスタイルなのかによっても違いますが、売られすぎ、もしくは、買われすぎて、理論株価から大きく乖離したときはチャンスといえます。

儲かる株を選ぶためにはまずはスクリーニング

スクリーニングとは?

銘柄選びにおけるスクリーニングとは、膨大な数の株式を特定の条件でふるいにかけて投資対象の株式を絞り込み、投資戦略と投資目的に合った銘柄を選ぶ過程を指します。投資家それぞれが投資戦略や目的に合わせてスクリーニングの条件をカスタマイズして投資判断に活用します。スクリーニングで設定する条件には、以下のようなものがあります。

  1. 財務指標:株価純資産倍率(PBR)、自己資本比率、有利子負債比率などで、企業の財務基盤をみる。
  2. 業績関連指標:売上高、利益、株価収益率(PER)などで、企業の収益性や成長性をみる。
  3. 配当関連指標:配当利回りや配当性向などで、企業がその期の利益を株主に配当として還元する傾向の度合いをみる。
  4. 産業や事業規模:時代の移り変わりや社会の動向から、将来的に利益を産みそうな産業の銘柄に絞ったり、時価総額の大きさで会社の事業規模を絞って投資する。
  5. テクニカル指標:移動平均線、一目均衡表などのテクニカル指標の状況で銘柄を絞る。
  6. リスク指標:ボラティリティ(株価の変動性)、ベータ(市場の変動に対する銘柄の敏感度)などで、リスク許容度に合った銘柄を選ぶ。

銘柄選びで重要な指標は?

投資の銘柄選びにもよく使われる代表的な指標とその計算式を、以下にご紹介します。

収益性をみる

売上高営業利益率

売上高営業利益率は、数値が大きければ大きいほど売上に対する収益性が高い企業であるといえます。

売上高営業利益率(%) = 営業利益 ÷ 売上高 × 100

EPS(1株当たり利益)

EPSは、純利益を発行済株式数で割った値で、1株あたりの純利益をみる指標です。

EPS = 純利益 ÷ 発行済株式数

割安/割高感をみる

PER(株価収益率)

PERは、企業の収益面からみた株価の割安感をはかる指標です。株式が利益の何倍まで買われているかを表していて、時価総額を純利益で割る数式からも求めることができます。PERが低ければ割安、高ければ割高とされます。ただし、PERは業種によっても平均値が異なり、単純な比較には向きません。

PER = 株価 ÷ EPS(1株当たり利益)= 時価総額 ÷ 純利益

PBR(株価純資産倍率)

PBRは、企業の資産面からみた株価の割安感をはかる指標です。PBRは企業の解散価値を表し、1倍を基準にしてそれより数値が大きければ割高、小さければ割安とされます。

PBR = 株価 ÷ BPR(1株当たり純資産)

BPS(1株当たり純資産)

BPSは、企業の純資産を発行済株式数で割った値で、1株あたりの企業の解散価値ということになります。株価がBPSよりも安ければ割安、高ければ割高です。

BPS = 純資産 ÷ 発行済株式数

効率性をみる

ROE(自己資本利益率)

ROEは、株主資本がどれだけ効率的に利用されているのかを表します。数字が大きければ大きいほど「効率がよい」とされます。

ROE (%) = 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100

ROA(総資本利益率または総資産利益率)

ROAは、資本がどれだけ効率的に利用されているのかを表します。数字が大きければ大きいほど「効率がよい」とされます。分子には営業利益や経常利益などの利益を使う場合もありますが、一般的には、事業の効率性をみるには当期純利益を使います。

ROA (%) = 当期純利益 ÷ 総資産 × 100

財務健全性をみる

自己資本比率

自己資本比率は、返済不要な自己資本が総資産に占める割合で、財務健全性をあらわします。自己資本比率の高い企業は、投資先としても安全性が高いといわれます。

自己資本比率 (%) = 自己資本 ÷ 総資産 × 100

有利子負債比率

自己資本のうちの有利子負債が占める割合で、企業の借入金の返済余力から安全性をみる指標です。有利子負債比率が低い企業のほうが、経営破綻に陥りにくく、リスクが低いと考えられています。

有利子負債比率(%) = 有利子負債 ÷ 自己資本 × 100

株主還元をみる

配当利回り

配当利回りは、1株当たりの配当金を株価で割った値を100で乗じたものです。

配当利回り(%) = 1株当たり配当金 ÷ 株価 × 100

配当性向

配当性向は、企業が獲得した利益のどのくらいを配当として株主に還元したかの割合を示す指標です。配当性向が高い企業の方が、株主を大切にする経営方針の企業と考えられています。

配当性向(%) = 配当金支払総額 ÷ 当期純利益 × 100

平均値を知って株の銘柄選びの参考にする

スクリーニングを行う前に明確にしておきたいのは、自分の投資のスタイルです。成長株やバリュー株、高配当株など、重視するポイントを明確にしてから、自分の投資のスタイルに合わせた条件でスクリーニングしましょう。単一の指標ではなく、複数の指標を組み合わせて総合的に判断することが大切です。また、同じ指標でも業種によって平均値が違うこともありますから、よく知る業種のなかから銘柄を選ぶというのも、投資の成功率を高める有効な戦略となり得ます。

日本企業の業績の平均値は?

日本企業の業績の平均値を計るときに、「自己資本利益率(ROE)」や「総資産利益率または総資本利益率(ROA)」の平均値をみることがあります。

経済産業省「2021年企業活動基本調査-2020年度実績-」から、日本企業の業績の平均値を探ってみましょう。この調査は、2021年3月31日現在で、36,294社の調査対象企業に対して経済産業省企業活動基本調査を実施した結果です。

対象の企業全体の2020年度の数値は、自己資本利益率(ROE)6.9%、総資本利益率(ROA)2.9%です。情報通信業は、自己資本利益率(ROE)12.2%、総資本利益率(ROA)6.1%と、どちらも最も高いです。自己資本利益率(ROE)が次に高い順に、学術研究、専門・技術サービス業9.2%、卸売業8.5%、製造業6.7%と続きます。鉱業、採石業、砂利採取業、製造業、情報通信業は、自己資本比率が50%以上で高い傾向が読み取れます。

企業の業績の平均値から株式投資の銘柄探しをする方法
経済産業省「2021年企業活動基本調査速報-2020年度実績-」の「付表6産業別、一企業当たり総資本、純資産、自己資本比率、自己資本当期利益率、総資本当期利益率」より産業分類コードごとの2020年度­­の実績を抽出して作成)

ROEの平均値は、業種の特性によって異なります。ROEの計算式は分母が自己資本であるため、少ない自己資本でも利益を生み出せる業種は平均値が高めになり、大きな自己資本が必要な業種は平均値が低めになります。そのため、業種別に特徴を理解してROEの平均値を押さえておきましょう。JPX日本取引所グループのホームページの決算短信集計結果から、取引市場別に集計した上場企業のROEをはじめとした決算の状況を業種ごとにみることができます。

ついでに、売上高営業利益率と売上高経常利益率の主要産業別の推移のグラフを参考に、日本企業の収益性と効率性も見ておきましょう。経常利益黒字企業比率の推移のグラフでは、2017年から黒字企業の比率が下降してきていて、製造業と小売業の下げがきついことが分かります。

主要産業の売上高営業利益率と売上高経常利益率の推移
主要産業の売上高営業利益率と売上高経常利益率の推移(2021年3月31日現在)(経済産業省「2021年企業活動基本調査速報-2020年度実績-」の「調査結果の概要」より引用)

欧米と日本企業の収益性の比較

では、欧米の水準と比較して日本企業の収益性はどうでしょうか。

経済産業省「伊藤レポート 3.0(SX 版伊藤レポート)2022年8月30日」の日米欧主要上場企業のROEの推移のグラフをみると、2021年のROEは、アメリカが20%以上で、日本は10%未満、欧州はちょうどその中間に位置しています。アメリカのROEは15%前後以上で推移してきているのに対して、日本は10%を超えることがなく推移しています。欧州のROEは低迷する局面では、日本と同じ水準であるものの、それでも10%から15%の間を推移してきていて、日本の企業よりも高い水準であると言えます。

よく耳にするのは、「日本企業はROEの水準が低いから欧米の企業と比較して収益性が低い」ということです。社会の風土や企業体質の傾向などにも違いがあるため、単純にROEの比較だけで日本企業の収益が低いと言い切ることはできませんが、投資家の目線でみたときに、ROEが高い水準の欧米の企業の方が魅力的に映るとは言えるでしょう。

日米欧主要上場企業のROEの推移
日米欧主要上場企業のROEの推移(経済産業省「伊藤レポート 3.0(SX 版伊藤レポート)2022年8月30日」より引用)

次に、日米欧主要上場企業におけるPBRの分布を見てみましょう。日本の企業はPBRが1倍未満の割安な銘柄が39%なのに対して、アメリカの企業は3%です。アメリカの企業はPBRが2倍以上の割高な銘柄が78%を占めているのに対して、日本企業は33%。欧州は、日本とアメリカの中間的な傾向があります。やはり、アメリカの企業の株は、投資家にすでに買われてきているようです。

日米欧主要上場企業におけるPBRの分布
日米欧主要上場企業におけるPBRの分布(経済産業省「伊藤レポート 3.0(SX 版伊藤レポート)2022年8月30日」より引用)

これらのデータを目前にしてどのような投資判断をするかは、それぞれの考え方や戦略によります。さらに深堀り分析をして、分散投資の参考にするのもよいかもしれません。

株式投資の初心者には自分で銘柄探しをしなくてもよい方法もある

投資を始めると、それまでとは違った視点で世の中をみるようになります。銘柄選びを楽しめるのも個別株投資の醍醐味です。しかし、やはり銘柄選びは難しい、投資にかける時間がないという方には、自分で銘柄選びをしなくてもよい方法を選択するという手もあります。投資信託やRIETを買う、IFAサービスを利用する、ロボアドバイザーサービスを利用するなどがその例です。

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