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証券口座は複数開設すると得をする? メリットとデメリット

投資を始めるにあたって必要となる証券口座は、ひとりで複数開設することが可能です。複数の口座の開設で得られるメリットとデメリットを、投資家歴15年以上のファイナンシャルプランナーが解説します。

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複数の証券口座を開設する前に知っておくべきこと

ひとりで複数の証券口座を開設したい場合には、知っておくべきことがいくつかあります。

ひとつ目は、「証券口座は、ひとつの会社にひとつずつ」です。証券口座とは、証券会社を通じて株式や投資信託などの金融商品の取引を行うために必要な口座で、「証券総合口座」や「証券総合取引口座」と呼ばれることもあります。初歩的なことですが、銀行口座とは別ものです。ひとつの証券会社で開設できる証券口座はひとりあたりひとつですが、複数の証券会社にそれぞれひとつずつ証券口座を開設すれば、ひとりで複数の証券口座を持つことが可能です。

通常の証券口座の種類には、特定口座と一般口座があります。特定口座では、株などの金融商品の取引による損益の計算を証券会社が行い、年ごとに取りまとめて年間取引報告書を作成してくれます。特定口座には、「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」のタイプがあります。金融商品の取引によって収益を得た場合には、その収益に対して約20%の税金(所得税・住民税・復興特別所得税)を支払う義務がありますが、特定口座(源泉徴収あり)を選んだ場合は、年間の損益計算をして収益が出た場合には税金分をあらかじめ差し引いて(源泉徴収して)納付するところまで証券会社が行ってくれるため、個人で税務署に確定申告をする必要が基本的には*¹なくなります(確定申告不要制度)。特定口座(源泉徴収なし)の場合の納税は、証券会社が作成した年間取引報告書をもとに個人で確定申告しなければいけませんし、一般口座の場合は年間の取引の損益計算から確定申告までをすべて自分で行わなければいけません。

ですが、もしもNISA以外での資産運用を考えていないのであれば、NISA口座をひとつ開設すればよい……というわけではないのです。NISAを始めるのにも、金融商品の取引を行うわけですから証券口座が必要です。証券口座をお持ちでない方は、まずは証券口座を最低ひとつは開設してから、NISA口座の開設の申請を行う流れになります。NISAは、証券会社だけでなく銀行でも申し込みが可能です。その場合でも、NISA口座以外に特定口座か一般口座のどちらかを同時に開設します。

iDeCo についても少し触れておくと、iDeCoは年金制度の一環であって、投資制度の一環であるNISAとは別のものです。ひとつの金融機関でiDeCoとNISAの両方を同時に申し込む場合でも、それぞれの口座開設手続きが必要になります。iDeCoだけ始めたい人は、特定口座か一般口座の開設は不要で、iDeCo専用口座のみの開設を証券会社や銀行などの金融機関で申し込みます。iDeCoは、「ひとり1口座のみ」で、複数の口座をもつことはできません。(途中で金融機関の変更は可能)。

NISAやつみたてNISAは、運用益の税金が非課税になる税制上の優遇措置であって、NISA口座はその優遇措置を受けるための専用の口座です。税制上の口座の分類として、通常の証券口座(特定口座や一般口座)は「課税口座」、NISA口座は「非課税口座」と呼びます。課税口座で取引された収益に対してNISAの優遇措置を受けることはできませんし、逆に、課税口座では可能な損益通算などの制度をNISA口座などの非課税口座に適用させることはできません。

複数の金融機関で口座を開設するメリット

では、複数の金融機関で口座を開設するメリットはあるのでしょうか?

金融機関ごとに取り扱う投資信託のラインアップが異なるため、複数の口座を持っている場合は購入できる商品の数が増える可能性があります。証券取引所に上場している個別株に投資をする場合は、複数の会社に口座を開設しても選択肢は変わりませんが、投資信託のみでの運用を行いたい場合はこの点がメリットになりえます。

それから、活用できるサービスや特典が増えるというメリットもあるかもしれません。口座開設者に向けたサービスは、会社ごとに違います。プロのエコノミストやアナリストによる経済情勢、市場分析や銘柄分析などのレポートやニュースなどの情報が無料で提供されたり、取引ツールもそれぞれ違います。それぞれの会社で異なる特色や強みがあるため、複数の会社に口座を開設しておけば受けることのできるサービスの選択肢が多くなるというわけです。

IPO株(新規公開株)の当選確率を上げるために、複数口座を開設する人たちもいます。IPO株は、新規に株式を証券市場に上場する会社の株で、複数の証券会社へ割り振られていて、一般の投資家の場合は、証券会社ごとに実施する抽選で当選しなければ購入できません。複数の会社で口座を開設して、それぞれの口座から申し込みをすれば、単純に考えて、当選確率が上がるというわけです。確かに、それは一種のメリットかもしれませんが、購入すれば必ず利益が出るわけでもないですし、初心者投資家にはおすすめしません。というのも、IPO株は、一般の投資家にとっては情報が少なく、初心者がその適正価値を見極めるのは難しいからです。投資ではなく投機目的でIPO株を購入する投資家も少なくはなく、公開後に株価が乱高下することも多いですから、よほどその業界に詳しくてその企業の将来性に確信が持てるというのではない限りは、下手に手を出さないほうが無難です。(企業の内部の社員や関係者が未公開の内部情報をもとに株などの売買をした場合は、金融商品取引法におけるインサイダー取引に該当し、処罰を受けます)。複数の証券会社に口座を開設するとIPO株の当選確率が上がるというのは、ある種のメリットとはいえるかもしれませんが、初心者にとってはその価値は低いと私は思います。

複数の金融機関で口座を開設するデメリット

管理に手間がかかる

複数の証券口座を開設すると、手続きや管理に手間を取られます。口座開設後に法改正などの度に書面確認作業などが発生したりするのも、複数の口座にそれぞれ行うとなるとその手間も馬鹿にはなりません。

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税金を多く払う羽目になることがある

複数の口座から利益を得るということは、納税の観点からみても複雑になります。その結果、場合によっては、口座がひとつであれば本来可能であったはずの節税を諦めざるをえなくなり、税金を多く支払う羽目になることがあります。

個人の所得税の課税には、総合課税と申告分離課税があります。総合課税は所得が多ければ多いほど税率が高くなる累進課税ですが、申告分離課税はそれとは分離して所得の種類に応じて決められた一律の税率で課税されます。いずれにも対象となる所得の種類*²が決められているのですが、株式や投資信託などの売買で得た譲渡(じょうと)益(えき)の場合は、総合課税と申告分離課税のどちらかを選択することができます。証券口座を特定口座(源泉徴収あり)にした場合の確定申告不要制度については前述しましたが、その場合、証券会社は投資の譲渡益の一律の税率20.315 %で申告分離課税として納税しています。特定口座(源泉徴収あり)にした場合でも、特定口座(源泉徴収なし)や一般口座と同様に個人で確定申告を行うこともできますが、いずれの場合でも確定申告をするということは、申告分離課税ではなく総合課税を選択したということになり、総合課税の税率が適用されることになります。

特定口座(源泉徴収あり)の場合でも、確定申告をした方がよいケースがあります。それは基本的には、総合課税を選択すると節税になる場合です。例えば、総合課税の税率が20.315 %よりも低い人(課税所得694万9千円以下)は、確定申告をすることで譲渡益にかかる税率を下げることができて節税になる可能性があります。課税口座(特定口座・一般口座など)での年間の取引で損失が出ていて損益通算制度 を利用したい場合や、配当控除 を受けたい場合は、確定申告をしなければ受けられません。

しかし、特定口座(源泉徴収あり)で申告分離課税の源泉徴収で完結させて、確定申告は行わない方が良いケースもあります。その際、節税を諦めることになる場合もあるでしょう。注意が必要なのは、例えば、以下のようなケースです。

  1. 総合課税の税率が20.315% 以上(課税所得が695万円以上 )の家族に扶養されている主婦(主夫)
  2. 国民健康保険に加入している人

譲渡益を確定申告すると、総所得金額に算入されます。総所得金額は、扶養家族の認定や国民健康保険料の算出のベースにもなっているため、総所得金額に算入された結果、扶養から外れてしまったり、国民健康保険料が高くなってしまう恐れが出てきます。メリットとデメリットを総合的に判断した方がよいのです。

所得税の税率(国税庁ホームページより)
所得税の税率 (令和4年4月1日現在)(国税庁ホームページより)
申告分離課税の譲渡益の税率(国税庁ホームページより)
申告分離課税の譲渡益の税率 (令和4年4月1日現在)(国税庁ホームページより)

複数の口座開設は使い分ける

複数の口座を持っているだけならばよいのです。お得な機能や取引ツールの使い勝手を確認したり、レポートやニュースなどの情報など、活用できるものがあれば活用するのもよいかもしれません。ですが、管理や確定申告が大変になるので、取引を行うのは年間で一貫してひとつの口座に絞ることをおすすめします。取引に使用する口座は、以下の3つのポイントを参考にして選んでみてください。

  1. 特定口座(源泉徴収あり)
  2. システムや取引ツールの質の高さ
  3. 取引できる金融資産の選択肢が多く、保有資産の管理がしやすい

特定口座(源泉徴収あり)

一般口座は、損益の計算など納税の事務的な手続きを個人で行う手間の負担が重いため、非居住者で特定口座の利用ができない場合や未公開株の取引を行いたい場合以外では、おすすめしません。特定口座(源泉徴収あり)を選んでおいて、年末時点での損益の状況をみてから翌年の2~3月の確定申告時期に申告するかどうかを決めるのがよいでしょう。

特定口座(源泉徴収あり)の場合であっても、複数の口座で取引をして利益の出た口座と損失の出た口座がある場合、損益通算制度を利用して節税をするためには確定申告をしなければいけなくなります。ひとつの特定口座(源泉徴収あり)のみで取引をしていれば、少なくとも譲渡益と配当の部分に関しては、確定申告をしなくても損益通算した上で源泉徴収されます。

システムや取引ツールの質の高さ

システムや取引ツールの質が高い証券会社を選びましょう。証券業が本業のネット証券会社(オンライン証券会社)では、プロ仕様のネット取引ツールが無料で利用できたり、金融危機などの大量の注文が殺到する局面でも、証券会社のシステムがダウンするといったようなことは少ないです。

取引できる金融資産の選択肢が多く、保有資産の管理がしやすい

銀行でNISA口座を申し込んだ場合、投資対象は投資信託のみになります。投資信託だけに投資したいということであればよいのですが、株式や債券などの取引もいずれ始めたいと考えているのであれば、初めから証券会社で口座を開設したほうがよいでしょう。証券会社であれば、国内の株式はもちろん、外国株、FX、債券など、さまざまな金融資産に投資することができます。米国株投資ならば米国株口座、FXならばFX口座といったようにそれぞれ専用の口座を開く必要がありますが、ひとつの証券会社で始めるのであれば口座開設手続きが楽で、保有資産の状況の確認がしやすいというメリットもあります。

NISA口座も年単位で金融機関の変更ができますが、変更前の保有商品の移管ができなかったり、ロールオーバーができなくなる可能性がでるなど、デメリットもあります。なるべく初めから、長期的にみて利用価値の高い口座を選びたいところです。

初めての口座選びや開設、確定申告をしたほうが得なのかどうかを総合的に判断するのは、なかなか難しいものです。ぜひ、お気軽にご相談ください。

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*¹ 年収2千万円以下の会社員で、給与・退職所得以外の所得が年間20万円以下の場合は、確定申告は不要。特定口座(源泉徴収あり)を選択した場合でも、確定申告をすることもできます。確定申告をしない方がよいケースと、した方がよいケースがあります。
*² 申告分離課税対象の金融商品の詳細は、国税庁ホームページをご覧ください。

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