将来の経済的備えを考えたときに、投資を視野に入れるのであれば手段は広がります。さまざまな手段の特徴を踏まえて自分に合った方法を組み合わせ、より効果的に将来のリスクに備えることができるのです。
「投資には興味はあるけれど、何から始めればよいのか分からない!」というひとのために、初心者にも比較的やさしい投資の方法をご紹介します。
投資を始める前に
投資を始める前にまず理解しておく必要があるのは、投資のリスクです。投資は元本(投資する元手の金額)が保障されておらず、投資対象の価値の先行きによって、元本以上のリターン(収益)を得ることもありますし、元本割れで損失を被ることもあります。ですから、「投資は余剰資金で行いましょう」とはよく言われることなのです。
ここで「やっぱり損するのは嫌だから、投資をするのはやめて生命保険や貯金にしよう」と尻込みするのはもったいない。言うまでもないことかもしれませんが、保険会社も銀行も預けられたお金をただ保管しているわけではなく、集まった資金を運用して利益を得ています。少し積極的になって投資を学んでみると、経済や社会のしくみへ自ずと目が向き世界をみる目もそれまでとは違ったものになるはずです。それに、保険や貯金にだってリスクはあり、100%安全とも言えません。投資にはリスクがあるとはいっても、自分が許容できるリスクの範囲を知り、過剰なリスクは取らずに身の丈にあった安全運用をすれば投資は決して怖いものではありません。
では、自分にとっての余剰資金とはどのくらいで、過剰なリスクとはどのくらいなのでしょうか?
長いお金と短いお金のはなし
会計には短期資産と長期資産の考え方があります。会社の経営状態をみることができる財務諸表のひとつの 貸借対照表 (Balance Sheet、以下、B/S)上の資産の形には、現金以外にも債権や株式、商品の在庫などさまざまな形があります。短期資産は、現金もしくは急に必要になってもすぐに現金化して使うことができる資産です。長期資産は、すぐには現金化できないタイプの長期債権や不動産などの資産です。そして、費用にもすぐに支払う必要のある短期費用と現在は支払う必要がないけれど将来には支払わなければいけなくなる長期費用があります。会社などの経営では、たとえ長期資産があったとしても急に支払う必要になった費用に対してすぐに対応できる現金などの短期的な資産の量が見合っていなくて不足してしまうと、資金繰りが悪化して倒産に陥りかねません。現金などの短期的な収支を管理する財務諸表として キャッシュフロー計算書 (Statements of Cash Flows、以下、C/S)があります。
個別銘柄に投資する株式投資の中上級者であればB/SやC/Sなどの財務諸表から資金繰りや経営状態を読むことができればその会社が安全な投資先かどうかを判断するのに役立つのですが、それは追々に徐々に身につけてゆくこととして、ここでは初心者でも比較的安心な投資を始めることを目的にまずはこの短期資産と長期資産の考え方を家計に当てはめて考えてみましょう。資産と費用の量が長期と短期の期間ごとにそれぞれ見合っているかどうかがポイントです。
もしものときに必要な金額はいくら?
日本は国民皆保険制度で高額療養費制度のある手厚い健康保険の制度に全員が加入していますから、それ以上の高額な治療費が一度に請求されることはありませんが、 病気に備えて常にある程度は現金やすぐに現金化できる形式で短期資産を保有しておくと安心です。家賃・生活費とは別に50~100万円程度の現金もしくはすぐに現金化できる貯えがあれば、当面はなんとかなるのではないでしょうか。療養費に限らず、人生のさまざまなライフイベントのなかで急にまとまったお金が必要になったときに、そのぐらいの短期資金を常に手元に置いておけばとりあえずはなんとかなりそうな金額でもあります。
しかし、現時点で貯金がないという人の場合には、それだけの貯えをどのようにして準備すればよいのでしょうか。現金貯蓄が貯まるまでの間は保険料の安い掛け捨て型の生命保険を短期的な医療費に対応させるべく上手く活用しながら、それとは別に少しずつ投資を始めて長期的な費用に充てる長期資産を形成してゆくのもひとつの方法だと思います。
初心者にもやさしい投資の種類
生命保険の手軽さといえば、難しい金融知識が不要で毎月決められた保険料を支払うだけであらかじめ決められた保障が受けられるパッケージ化された商品という特徴が理由として挙げられるのではないでしょうか。預貯金は、1,000万円とその利息は金融機関によって保障されていますから、元本保証の安心感と流動性の高さがメリットであるといえます。投資のなかでも、預貯金に近い特徴のある種類の投資であれば、初心者にも比較的敷居が低く始めやすいといえるかもしれません。
預金類似型
現金の価値も、国内外の情勢やインフレやデフレなどの影響で価値が変動します。市場価値の変動はあるものの、比較的預金に近い特徴がある投資を預金類似型と独自に名付けてまとめてみました。
債権
満期時に受け取れる額面金額や定期的に受け取れる利子の金額などの条件が発行時にあらかじめ定められているので、満期まで保有するつもりなのであれば定期預金に近い感覚で投資することができます。償還までの期間(定期預金の満期のようなもの)も、2~5年の短期のものから10~40年の長期のものまでさまざまです。満期(償還)を待たずに売却が可能な条件が付いている債権は途中で売却することもできますが、債権市場の価格は常に変動しているため購入した額よりも上がっているときに売却すれば売却益が得られますし、下がっているときに売却すれば売却損が発生します。
個人向け国債は証券会社や金融機関、社債は証券会社で購入することができます。
金・プラチナなど貴金属の現物資産
金・プラチナなど貴金属への投資の仕方にもいろいろとありますが、金貨や金地金など現物資産を購入して保有するのであれば個人であっても預金に近い感覚で投資が行えるかもしれません。
金貨は宝飾品店や百貨店などで購入でき、地金は地金商や金属メーカー、商社などで購入できます。
パッケージ型
生命保険のように専門家によって運用されているパッケージ化された金融商品をパッケージ型と独自に名付けてまとめてみました。
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投資信託
運用会社の専門家の指図によって株式や債券などへの投資がなされ、その運用成果(利益)を投資家に分配する仕組みの金融商品です。 投資信託 のラインアップによって、投資対象が国内・海外の株式、債権、不動産、コモディティ(商品=商品先物市場で取引されている原油やガソリンなどのエネルギー、金やプラチナなどの貴金属、トウモロコシや大豆などの穀物などのこと)と幅広いため、さまざまな投資対象に分散させて投資する分散投資が少額からできます。 日経平均株価 や TOPIX(東証株価指数) などの指数に連動することを目指す パッシブ運用 を行うパッシブファンドと、ベンチマークの指数を上回る成果を目指してよりハイリスクハイリターンな アクティブ運用 を行うアクティブファンドがあります。
証券会社や銀行・郵便局などで購入することができます。
ETF (上場投資信託 Exchange Traded Funds)
ETF は上場投資信託ともいい、その名のとおり証券取引所に上場している投資信託です。株式投資に近い感覚で投資することができますが、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)などの指数に連動するように運用会社の専門家によって運用されているので、個別銘柄の知識がなくても組み込まれている銘柄全体に分散した投資を少額から行うことができます。
証券会社に口座を開設し、証券会社を通じて証券取引所で売買を行います。
J-REIT (Japan Real Estate Investment Trust)
REITは不動産投資信託ともいい投資信託に似た仕組みの商品ですが、投資対象が不動産であるということとETFのように証券取引所に上場しているという特徴があります。不動産投資法人が購入したオフィスビルや商業施設、マンションなどの不動産などから得た賃貸収入や売買益が投資家に分配される仕組みです。
証券会社に口座を開設し、証券会社を通じて証券取引所で売買を行います。