新NISAが2024年1月にスタートし、海外資産で運用する投資信託の売り上げは好調であったといいます。*¹ その一部の資金は、人口増加予測と経済発展への期待から投資先としての注目度が高まるインドへ投資するファンドにも流れているようです。*²
「インド株投信・2024年1月資金流入額上位」(QUICK資産運用研究所調べ2024年1月31日時点データ)*² において、月間246億円の資金流入額で第1位であった「iFreeNEXTインド株インデックス」をはじめとして、月間100億円以上の資金流入額でトップ5のインド株投資信託を、さまざまな角度からファイナンシャルプラナーが深掘り比較して、新NISAで売れ筋のインド株ファンドの特徴や人気の傾向を探ってみました。
トップ5ファンドの特徴と違い
組入上位5業種比較
iFreeNEXT インド株インデックス【第1位】
金融が2割近く占めている。情報技術、エネルギーが7~8%程度ずつ。
HSBC インド・インフラ株式オープン【第2位】
資本財の企業が約半数を占め、素材、エネルギー、公益事業がそれに続く。
ダイワ・ダイナミック・インド株ファンド【第3位】
1位は金融(27.5%)。主にインフラ、消費関連銘柄。
SBI・iシェアーズ・インド株式インデックス・ファンド【第4位】
上位3業種は、銀行(36.8%)、情報技術、エネルギー。
新光ピュア・インド株式ファンド【第5位】
1位の銀行(24.7%)と3位の金融サービス(9.1%)を合わせると金融(33.8%)。2位はエネルギー。
特徴と組入銘柄上位10銘柄の比較
* 表は横にスライドします。
iFreeNEXT インド株インデックス | HSBC インド・インフラ株式オープン | ダイワ・ダイナミック・インド株ファンド | SBI・iシェアーズ・インド株式インデックス・ファンド | 新光ピュア・インド株式ファンド | |
運用会社 | 大和アセットマネジメント | HSBCアセットマネジメント | 大和アセットマネジメント | SBIアセットマネジメント | アセットマネジメントOne |
特徴 | インドの株式に投資し、Nifty50指数への連動をめざして運用する。 | インドのインフラ関連の企業に投資する。 | インド経済の発展に関連するインドの株式(主にBSE500 指数採用銘柄。インフラ、消費関連銘柄)に投資する。 | 資産構成は、iシェアーズ・コア S&P BSE SENSEXインディアETF が99.9%。 | TATAグループの投資信託会社が運用する外国籍の投資信託証券を通じて、実質的にインド株式に投資する。 |
NISA | 成長投資枠 | 成長投資枠 | 成長投資枠 | 成長投資枠/つみたて投資枠 | 成長投資枠 |
分類 | 追加型/インデックス型 | 追加型/アクティブ型 | 追加型/アクティブ型 | 追加型/インデックス型 | 追加型/アクティブ型 |
投資対象 | 株式 | 株式 | 株式 | 株式 | 株式 |
決算 | 年1回 | 年1回 | 年2回 | 年1回 | 年1回 |
投資形態 | ファミリーファンド | ファミリーファンド | ファミリーファンド | ファミリーファンド | ファンド・オブ・ファンズ |
対象インデックス | Nifty50 指数 | — | — | S&P BSE SENSEXインデックス | — |
購入時手数料 | — | 3.85%(税抜3.50%)上限 | 3.3%(税抜3.0%)上限 | — | 3.3%(税抜3.0%)上限 |
信託報酬 | 年0.473%(税抜年0.43%)以内 | 年2.09%(税抜年1.90%)以内 | 年1.848%(税抜年1.68%)以内 | 年0.4638%(税込)程度 | 年1.21%(税抜年1.1%)以内 |
1 | IFSC NIFTY 50 FEB 24/—/45.0% | LARSEN & TOUBRO LTD/資本財/9.1% | ICICI BANK LTD-SPON ADR/金融/7.8% | HDFC BANK LIMITED/金融/13.54% | RELIANCE INDUSTRIES LTD/エネルギー/9.8% |
2 | HDFC BANK LIMITED/金融/6.4% | RELIANCE INDUSTRIES LTD/エネルギー/9.0% | AXIS BANK LTD/金融/7.3% | RELIANCE INDUSTRIES LTD/エネルギー/12.01% | HDFC BANK LTD/銀行/9.4% |
3 | RELIANCE INDUSTRIES LTD/エネルギー/5.6% | NTPC LIMITED/公益事業/5.51% | HDFC BANK LTD/金融/ 6.7% | ICICI BANK LTD/金融/8.79% | ICICI BANK/銀行/ LTD. 6.1% |
4 | ICICI BANK LTD/金融/4.2% | OIL AND NATURAL GAS CORPORATION LTD/エネルギー/4.5% | RELIANCE INDS-SPONS GDR 144A/エネルギー/ 6.0% | INFOSYS LTD/情報技術/7.24% | STATE BANK OF INDIA/銀行/4.3% |
5 | INFOSYS LTD/情報技術/3.5% | JINDAL STEEL & POWER LTD /電気通信サービス/4.4% | LARSEN & TOUBRO LTD/資本財・サービス/ 5.9% | LARSEN & TOUBRO LTD/資本財・サービス/5.78% | ITC LTD/食品・飲料・タバコ/ 3.4% |
6 | LARSEN & TOUBRO LTD/資本財・サービス/2.5% | DLF LIMITED/不動産管理・開発/3.9% | ABB INDIA LTD/資本財・サービス/ 5.6% | ITC LTD/生活必需品/ 5.13% | LARSEN & TOUBRO LTD/資本財/3.1% |
7 | ITC LTD/生活必需品/2.3% | POWER FINANCE CORPORATION LTD/金融サービス/2.7% | CUMMINS INDIA LTD/資本財・サービス/ 4.8% | TATA CONSULTANCY SVCS LTD/情報技術/ 4.77% | HINDUSTAN UNILEVER LTD/家庭用品・パーソナル用品/3.1% |
8 | TATA CONSULTANCY SVCS LTD/情報技術/2.3% | JINDAL STAINLESS LTD/素材/ 2.6% | ULTRATECH CEMENT LTD/素材/ 3.4% | AXIS BANK LTD/金融/ 4.77% | PI INDUSTRIES LTD/素材/3.1% |
9 | BHARTI AIRTEL LTD/コミュニケーション・サービス/1.7% | POWER GRID CORPORATION OF INDIA LTD/公共事業/2.5% | INDIAN HOTELS CO LTD/一般消費財・サービス/ 3.4% | BHARTI AIRTEL LTD/コミュニケーションサービス/ 3.69% | KOTAK MAHINDRA BANK LTD/銀行/2.8% |
10 | AXIS BANK LTD/金融/1.7% | ULTRA TECH CEMENT LTD/素材/2.5% | MARUTI SUZUKI INDIA LTD/一般消費財・サービス/ 3.3% | KOTAK MAHINDRA BANK LTD/金融/ 3.61% | IDFC LTD/金融サービス/2.7% |
運用各社が公表する月次レポート(作成基準日:2024年1月31日)のデータより筆者作成。
投資先の違い
上位5ファンド中、「iFreeNEXT インド株インデックス」「SBI・iシェアーズ・インド株式インデックス・ファンド」の2ファンドがインデックスファンド、残りの3ファンドはアクティブファンドでした。共通するのは、株式が投資対象で、直接的または間接的にインドの発展に投資する点です。
2つのインデックスファンドの違いとしては、連動を目指すインデックスに違いがあります。「iFreeNEXT インド株インデックス」はNifty50指数、「SBI・iシェアーズ・インド株式インデックス・ファンド」はS&P BSE SENSEXインデックスをベンチマークにしています。
投資対象を業種別にみると、「インフラ」関連の企業に投資する「HSBC インド・インフラ株式オープン」は半分近くを「資本財」に投資していますが、それ以外の4ファンドは、「金融」セクターに最も多く投資しています。そして、「金融」のなかでも、投資先は銀行が多いのが特徴です。インデックスファンドでは、「情報技術」の割合が2番目に多く、その割合は「iFreeNEXT インド株インデックス」は7.9%、「SBI・iシェアーズ・インド株式インデックス・ファンド」では15.9%です。
5つのファンドの売れ行きが好調の理由
新NISAの影響は?
2023年の新規設定銘柄数は406、2022年は289。前年と比べて1.4倍の数のファンドが2023年中に新規設定されています。2024年1月からの新NISAに合わせて、ファンドの新規設定数が伸びていることがデータからも読み取れます。
インデックス型の2銘柄は、2023年に新規設定された新しいファンドです。「iFreeNEXT インド株インデックス」は2023年12月にNISA対象銘柄に追加されました。インデックス型は信託報酬が低めで、初心者への敷居も比較的低めです。新NISAのスタートに合わせて業界全体で盛り上げていったプロモーションの効果も考えられます。
アクティブファンドの人気の傾向
トップ5にランクインしたファンドの内のアクティブファンド3本の特徴を、他のNISA対象インド株式ファンド(追加型株式投信)のパフォーマンスデータと比較して分析してみました。
「HSBC インド・インフラ株式オープン」は、NISA対象インド株投信のなかで短期的な(1年・5年)リターンが最も高いファンドでした。10年のリターンでも3位です。しかし、5年・10年のリスクも高く、リスクを積極的にとって短・中期的にリターンを追求したい投資家に向いているファンドといえます。
「新光ピュア・インド株式ファンド」は、1年・5年のリターンはインド株投信のなかでは平均的ですが、10年のシャープレシオは「HSBC インド・インフラ株式オープン」よりも高くなっていて、長期的な投資効率が優れていることを示しています。リスクは積極的にとらずに、長期的に安定的なリターンを追求したい投資家に比較的向いています。
インデックスファンドの人気の傾向
インデックスファンドでは、純資産総額の大きいファンドが、その大きさの順に資金流入額上位2ファンドになった結果となりました。その他の要因としては、コストの安さがあげられるでしょう。インデックスファンドは、アクティブファンドと比較して、運用コストがかからず、信託報酬の水準が低めです。ランクインした「iFreeNEXT インド株インデックス」「SBI・iシェアーズ・インド株式インデックス・ファンド」の2ファンドとも、購入手数料の設定がなく、信託報酬も低めに抑えられています。
「iシェアーズ・インド株式インデックスファンド」はS&P BSE SENSEXインデックスをベンチマークにしますが、それ以外はNifty50指数をベンチマークにしています。
今後が注目される新規設定インデックスファンド
NISA対象のインデックス型インド株投資信託は、2024年1月時点で4本のみでしたが、2024年2月22日に三菱UFJアセットマネジメントの「eMAXIS インド株式インデックス」、同年3月1日には大和アセットマネジメントの「インド株インデックス」が新規設定されています。
eMAXIS インド株式インデックス(三菱UFJアセットマネジメント)
eMAXISシリーズといえば、年率0.05775%(税抜 年率0.0525%)以内という低い信託報酬で世界のインデックスに投資できる「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」(通称「オルカン」)が大量の資金を集めている(2024年3月11日時点の純資産総額は27,081.82億円)インデックスファンドシリーズ。2024年2月22日に「eMAXIS インド株式インデックス」が新規設定されました。2024年3月11日時点の純資産総額は79.52億円で、新規設定後約2週間で3番目に大きな純資産総額のNISA対象インド株投資信託になっています。すでに述べたように、インド株インデックスファンドのなかでは、純資産総額の大きなファンドほど新NISAの開始と同時に資金流入額が多かったという結果になっています。今後も注目されるファンドのひとつであるといえます。
eMAXIS インド株式インデックス | |
運用会社 | 三菱UFJアセットマネジメント |
設定日 | 2024年2月22日 |
NISA | 成長投資枠 |
分類 | 追加型/インデックス型 |
投資対象 | 株式 |
決算 | 年1回 |
投資形態 | ファミリーファンド (マザーファンド: インド株式インデックスマザーファンド) |
対象インデックス | Nifty50 指数 |
為替ヘッジ | なし |
購入時手数料 | — |
信託報酬 | 年率0.44%(税抜 年率0.4%)以内 |
取扱い販売会社 | マネックス証券 楽天証券 |
インド株インデックス(大和アセットマネジメント)
運用会社が同じ大和アセットマネジメントで、2024年1月の資金流入量1位の「iFreeNEXT インド株インデックス」と2024年3月1日に新規設定の「インド株インデックス」を比較してみました。「インド株インデックス」は、取扱い販売会社が三菱UFJ信託銀行のみで、信託報酬が高く、購入時手数料があるという以外に、違いはありませんでした。どちらもインド株インデックス・マザーファンドのベビーファンドです。
* 表は横にスライドします。
インド株インデックス | iFreeNEXT インド株インデックス | |
運用会社 | 大和アセットマネジメント | 大和アセットマネジメント |
設定日 | 2024年3月1日 | 2023年3月13日 |
NISA | 成長投資枠 | 成長投資枠 |
分類 | 追加型/インデックス型 | 追加型/インデックス型 |
投資対象 | 株式 | 株式 |
決算 | 年1回 | 年1回 |
投資形態 | ファミリーファンド (マザーファンド: インド株インデックス・マザーファンド) | ファミリーファンド (マザーファンド: インド株インデックス・マザーファンド ) |
対象インデックス | Nifty50 指数 | Nifty50 指数 |
為替ヘッジ | なし | なし |
購入時手数料 | 3.3%(税抜3.0%)上限 | — |
信託報酬 | 年率0.979%(税抜0.89%) | 年0.473%(税抜年0.43%)以内 |
取扱い販売会社 | 三菱UFJ信託銀行 | SBI証券 愛媛銀行 auカブコム証券 三十三銀行 ソニー銀行 大和コネクト証券 フィデリティ証券 松井証券 マネックス証券 三菱UFJ銀行 楽天証券 |
大和アセットマネジメント公表のデータから筆者作成。
新NISAで人気のインド株ファンドを深掘り比較してみえたこと
2024年1月に資金流入額が多かったトップ5のインド株投資信託を深掘り比較してみた結果、ファンドの投資先を業種別でみると、「金融」に投資する割合が大きく、なかでも銀行が多いという特徴がありました。
インデックスファンドでは、純資産総額の大きなファンドにさらなる資金が集まった結果となりました。2024年2月22日に新規設定された「eMAXIS インド株式インデックス」は、設定後約2週間でNISA対象インド株インデックスファンドのなかで3番目に大きな純資産総額となっています。今後も注目されるファンドのひとつであるといえます。
アクティブファンドでは、短・中期的により高いリターンが見込めるファンドに人気が集まる傾向がみられました。人口増加が続き、これからの経済発展への期待があるインド。インド株へ投資する投資家心理としては、「これからの市場」への期待感からの「買い」です。そのなかでも、より「ハイリスク、ハイリターン」を意図した購買傾向が垣間見られる結果となっていました。
引用(参照)文献:
*¹ 「新NISA好調、月2300億円予約 ネット証券5社調査 海外株人気、成長に期待」(日本経済新聞)https://www.nikkei.com/article/DGKKZO77227600U3A221C2MM8000/
*² 「インド株投信の資金流入額、インデックス型が首位」(日本経済新聞, 2024年2月26日, https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFL211520R20C24A2000000/)
*³ 日本経済新聞 投資信託サーチ https://www.nikkei.com/markets/fund/search/
*⁴ eMAXIS インド株式インデックス(三菱UFJアセットマネジメント) https://emaxis.jp/fund/254568.html
*⁵ インド株インデックス(大和アセットマネジメント) https://www.daiwa-am.co.jp/funds/detail/4657/detail_top.html?sct-details
#1 iFreeNEXT インド株インデックス(大和アセットマネジメント) https://www.daiwa-am.co.jp/funds/detail/3484/detail_top.html
#2 HSBC インド・インフラ株式オープン(HSBCアセットマネジメント) https://www.assetmanagement.hsbc.co.jp/ja/individual-investor/funds/indiainfra
#3 ダイワ・ダイナミック・インド株ファンド(大和アセットマネジメント) https://www.daiwa-am.co.jp/funds/detail/4777/detail_top.html
#4 SBI・iシェアーズ・インド株式インデックス・ファンド(SBIアセットマネジメント) https://apl.wealthadvisor.jp/webasp/sbi_am/pc/basic/sa_2023092202.html
#5 新光ピュア・インド株式ファンド(アセットマネジメントOne) https://www.am-one.co.jp/fund/summary/118240/